27年前に頓挫した安部公房『箱男』が映画化 永瀬正敏主演・石井岳龍監督

映像化

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 安部公房の長編小説『箱男』の映画化が実現し、2024年8月23日に永瀬正敏主演で公開される。

 原作の『箱男』は、安部公房が1973年に発表した小説で、ダンボール箱を頭からすっぽりとかぶり、覗き窓から外の世界を見つめて都市を彷徨う「箱男」を描いた一冊だ。一切の帰属を捨て去り、存在証明を放棄した先にあるものを問う難解なテーマのため、映像化は困難であると言われていた。実際、石井岳龍監督によって、1997年の時点で映画製作が決定していたが、撮影が頓挫し、幻の企画となっていた。

 安部公房の生誕100年にあたる2024年――27年の歳月を経て石井監督が実現した映画では、27年前に出演予定だった永瀬正敏が主人公の箱男を演じ、同じくキャスティングされていた佐藤浩市が出演。世界的な活躍をする浅野忠信や数百人にのぼるオーディションから抜擢された白本彩奈などが加わり完成した映画「箱男」は第74回ベルリン国際映画祭に正式招待されている。

 原作者の安部公房は、1924年東京生まれ。東京大学医学部卒。1951年に「壁」で芥川賞を受賞。1962年に発表した『砂の女』は読売文学賞を受賞したほか、フランスでは最優秀外国文学賞を受賞。その他、戯曲「友達」で谷崎潤一郎賞、『緑色のストッキング』で読売文学賞を受賞するなど、受賞多数。1973年より演劇集団「安部公房スタジオ」を結成、独自の演劇活動でも知られる。海外での評価も極めて高く、1992年にはアメリカ芸術科学アカデミー名誉会員に。1993年急性心不全で急逝。2012年、読売新聞の取材により、ノーベル文学賞受賞寸前だったことが明らかにされた。

2024年6月10日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです
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