■超高額賞金だけじゃない! 稼げる仕組みがありすぎる文学賞
――では、ピッコマノベルズ大賞がどんな賞なのか教えてください。
浅野:2022年11月に第1回ピッコマノベルズ大賞が始まり、今は第2回を実施中で応募を受け付けています。この賞は、賞金総額2000万円という大きな賞金額が目玉になっています。
また、他の文学賞では大賞の受賞後に出版が決まることが多いですが、ピッコマノベルズ大賞では、1次審査を通過した作品すべてがすぐにピッコマで連載スタートし、受賞前から作品販売が始まることが特徴です。さらに、この連載で1話ごとの原稿料、販売などの収益が発生すれば作者の方にお支払いします。
――とんでもなく“稼げる”仕組みになっていますね。
浅野:他の文学賞に比べるとまだまだ知名度が低いので、狙い目だと思います(笑)。応募については、プロ・アマを問わず広くご応募いただけます。第1回では、プロの作家でない方が副業として応募して下さるケースも多く、普段は会社員など別の職業をお持ちでしたり子育て中の方など、執筆経験のない方にもお気軽に応募いただければ嬉しいです。
――審査はどのように行われるのですか。
浅野:審査は2段階ありまして、まずは読者審査員による1次審査が行われ、一次審査通過作品は全てピッコマでの連載が始まります。全ての一次審査通過作品の連載を開始した後、1年に一度、最終審査となる2次審査会を社内で行います。ここで大賞の1作品(賞金1000万円)、優秀賞の2作品(賞金300万円)、奨励賞の4作品(賞金100万円)を決めます。
第1回では、約900作品の応募がありました。そこから複数の読者審査員の目を通して25作品が1次審査を通過しましたが、うち2作品は同じ作者のものでした。このように、複数作品の応募も可能ですので、どんどん作品を書いてチャレンジしていただきたいです。
他の特徴として、年間を4つのシーズンに分けて、各シーズンごとに募集テーマを提示し、それに沿った作品を受け付けている点があります。現在はちょうど第2回の第2シーズンを募集していまして、提示しているテーマは〈VRゲーム×どん底主人公の成り上がり〉と、〈西洋風ロマンスファンタジー×転生ヒロインのサクセスストーリー〉の2つになります。どちらもピッコマで人気があるものにしていますので、テーマに沿った作品を応募するだけでも読者の人気を得やすいと思います。各シーズンの応募期間は約2か月程度あり、期間終了後にそれぞれ1次審査が行われます。応募要項やテーマなどの詳細は、ピッコマノベルズ大賞の特設サイトやアプリで公開していますので、ご興味のある方は確認してみてください。
■どんな作品がピッコマノベルズ大賞に選ばれる? 受賞のコツを初公開!
――どんな作品を書けば受賞しやすいか、こっそり教えていただけませんか。
斉藤:では、せっかくの取材なので蔵出し情報を……(笑)。応募作品は、基本的に週刊連載になりますので、毎週ちゃんと読んでもらえる作品であるかどうかが一つのポイントです。各話ごとに、お話の“引き”を作ることが大事になってきます。この点、引きをしっかり作れていた作品が連載中の読者からの反応が良く、継続して読まれている印象を持ちました。
あとは、ノベル作品だからといって日本のライトノベルの流行りだけを意識しすぎないこともポイントだと思います。例えば、「悪女」というテーマは異世界ファンタジー作品のテーマとしてすごく人気がありますが、日本のライトノベルで人気のある「悪女」と、SMARTOONで人気の「悪女」は微妙に違いがあります。ピッコマの場合SMARTOON読者も多いので、読者審査員の嗜好を想像してどのタイプの「悪女」を書くか戦略的に選んでもいいと思います。
でも、まずは応募要項にあるようにきちんと20話が揃っていて、字数やテーマなどの条件に沿ったものであることが大前提です。第1回でも、そんなに多くはありませんでしたが、条件を満たしておらず1次審査に出せなかった作品もありましたので、よく要項を確認していただきたいです。
受賞作品を決める2次審査では、読者の方が今後も楽しんでくれて、好きになってくれる作品かどうかという点を一番重要視しています。ストーリーが完結していない状態の20話までを応募していただくので、その後のストーリーも面白くなりそうかどうかは大事な点ですね。
そして、実は、ピッコマが考える読者の方が好きなものを募集テーマとして選んでいるので、テーマに忠実に書いていただければ、読者の心も掴めるのでは。特設ページではそれぞれのテーマでの人気作品も紹介していますので、読んでいただければきっと参考になると思います。
――第1回では『年下夫の未来のために、離婚状を置いて出ていった結果』(朧月あき・著)という作品が大賞となりましたが、どの点が優れていたのでしょうか。
斉藤:他作品より特に抜きん出ていたのは、読者を飽きさせない工夫ですね。これが凄かったです。1次審査の読者審査員は、各作品20話もあるので、つまらなかったり飽きたりすれば途中で読むのをやめてもいいんです。そんな条件でも読者によく読まれたのは、1話ごとに飽きさせない工夫をし、さらに主軸となるストーリーも魅力的だったからでしょう。読むのが止められなくなる作品でした。
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