「昨日まで元気だった人の心臓が…」とつぜん命を落とすことがある血管病の原因と予防法とは?

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■健康な血管の3つの定義とポイント

 健康な血管の定義は、次の3つです。

(1)弾力性があり、しっかり拡張する(広がる)
(2)血管内の傷(ささくれ)の修復力が高い
(3)血液がさらさらの状態でかたまりにくい

 (1)の血管拡張力を高めるためにポイントとなるのはNO(エヌオー)。NOとは「一酸化窒素」のことです。血管は外膜、中膜、内膜の3層構造になっており、内膜のさらに内側は血管内皮細胞で覆われています。NOは、この血管内皮細胞から放出され、血管の収縮・拡張を正常に保つ役割を担います。すなわち強力な「血管拡張物質」ということです。ほかにも、NOには血栓をできにくくし、血液をさらさらにしたり、血管の酸化を防ぐ、プラークの形成を抑える、血管の炎症を抑えるなどの作用があります。

■どれだけNOを放出できる血管でいられるかが血管強化のカギ

 加齢とともにNOの量は減ります。すると、血管の弾力性も下がります。血液をさらさらにして血栓を作りにくくする作用や、抗炎症・抗酸化作用も下がり、血管の老化が進みます。老化した細胞はやがて死に、二度とよみがえりません。つまり、老化する前に手を打たなければならず、そのカギとなるのがNOなのです。NOをたくさん作るためには、NOのもととなるアミノ酸、タンパク質を積極的に摂ることが重要です。

 (2)の血管修復力のポイントとなるのは、アディポネクチンという物質です。これは体の脂肪細胞から分泌されるホルモンの一種。血管内にできた傷を修復する機能を持ちます。

 (1)(2)に加えて血液がさらさらであること。この3つのはたらきが正常であることが血管の健康には不可欠です。


NO(一酸化窒素)が多い血管はやわらかく、しっかり拡張、収縮できる(イラストはイメージ)

■血管を老化させる4大原因とは?

【原因その1 酸化】
 私たちは、体に取り込んだ酸素を使い、食事から摂った栄養素を燃やすことでエネルギーを作り出しています。このとき、活性酸素と呼ばれる物質が発生します。活性酸素は、体内に侵入したウイルスや菌を退治する「いい面」も持ちますが、過剰に発生すると、体に備わっている抗酸化機能とのバランスが崩れ、体が強い酸化ストレスにさらされます。すると活性酸素は自分の細胞まで傷つけ、細胞が酸化します。酸化は体を老化させるだけでなく、血管にも被害をおよぼします。

【原因その2 糖化】
 糖化とは、体の中のタンパク質が糖と結合し、糖タンパクという物質になること。「体の焦げ」ともいわれ、糖化が起こると体内でAGEと呼ばれる物質が作られます。AGEは酸化LDLコレステロールと同様に、血管の壁に入り込んでプラークを作ったり、血管内皮細胞のはたらきをさまたげたり、炎症を起こしたりします。

【原因その3 炎症】
 炎症とは、体内に侵入した悪い物質と細胞(マクロファージ)が闘って、体内で火事が起こっている状態です。炎症が起こるとその部位が赤く腫れたり痛んだりします。炎症は体のいたるところで起こっています。風邪で熱を出すのも、風邪の菌と白血球が闘って起こる炎症によるものですし、皮膚炎、肺炎なども、皮膚や肺が炎症を起こしているのです。

 また、血液が血管にぶつかると血管壁が傷つき炎症が起きます。炎症がすぐに治まれば血管の修復機能で修復されますが、炎症が長引くと正常な細胞が減り、血管内は焼け野原状態に。そのまま放置すれば動脈硬化や血栓を招きます。炎症の度合いは、血液検査のCRPという項目でわかります。基準値は0.30mg/dL以下で、体内で炎症が起きたり、組織細胞に障害が起きたりすると数値が上がります。

【原因その4 ストレス】
 私たちは日々ストレスにさらされています。不安、怒りなどの心のストレスだけでなく、睡眠不足や過労など、体のストレスもあります。こういった、日々受け続けるストレスを「慢性ストレス」といい、血管をボロボロにする原因となります。

 ストレスを受けると、自律神経を形成する神経系のうち、活動力を高めるといわれている「交感神経」が優位になります。交感神経が頑張っている間、体は緊張状態が続きます。無意識のうちに全身に力が入り、血管はギューッと収縮して細くなります。血液は狭いところを流れることになるため血圧も上がります。

 圧力が高いまま血液が流れ続けると、血管の壁は傷つきやすくなります。つまりストレスを受けている間、血管は傷つき続けているのです。やがて修復が追いつかなくなり、動脈硬化を招くことになります。

 血管ストレス解消のためには、副交感神経をしっかりはたらかせることが大切です。副交感神経は、睡眠中や入浴中など、リラックスしているときに優位になります。深呼吸やたくさん笑うこともおすすめです。


酸化・糖化・炎症・ストレスが血管を老化させる4大原因だ

杉岡充爾(すぎおかクリニック院長・医学博士)
すぎおかクリニック院長。医学博士。1965年生まれ。日本内科学会認定医、日本循環器学会専門医、日本抗加齢医学会専門医、日本医師会健康スポーツ医。予防医学・救急医学・心理医学という、健康の入口と出口の両面からみている現役医師だからわかる、価値あるメソッドを伝えている。千葉県船橋市立医療センターの救急医療に約20年間携わり、約10,000人の心臓治療にあたる。患者を病気の前段階で予防できるような医学の重要性を強く感じ、“世の中から「心臓病患者を一人でも減らす」”というミッションのもと、2014年5月より千葉県船橋市において「すぎおかクリニック」を開院。患者に寄り添う人柄が噂となり患者が殺到、顧客満足度100%という驚異の人気クリニックとして、テレビ・雑誌等に出演。現在までにのべ10万人超を診ている。著書に、『強い血管をつくれば健康になる』(ベストセラーズ)、『強い血管をつくる5つの習慣』(同文館出版)、『最高の疲労回復法』(大和書房)、『おうちストレスを溜めない習慣』(クロスメディア・パブリッシング)など多数。

杉岡充爾(すぎおかクリニック院長・医学博士)/イメージ画像:Shutterstock

Fun-Life!
2023年11月14日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

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