「男の子なのに長い髪の毛なんて変だ」
自分らしさを尊重しようという方向に社会が動き始めた昨今、子どもの容貌もひと昔前とは変わってきた。長髪をなびかせて歩く男の子を街で見かけることもある。もし、それを見た我が子から「変だ」なんて否定するような言葉が出たら、親はどう行動すべきなのだろう。
つい、「そんな風に言うんじゃない!」と叱って終わりにしがちな方も多いのではないか。しかし、それで子どもに「何が問題なのか」がきちんと伝わるのだろうか。
ジェンダー論・男性学を専門とする大妻女子大学の田中俊之先生は、『アイラブみー じぶんをたいせつにするえほん』(新潮社)の中で、子どもにジェンダーについて伝えるときのアドバイスを語っている。
子どもが他者を尊重し、自分自身も大切にできるようになるために、親が気を付けたいこととは?
※以下は『アイラブみー じぶんをたいせつにするえほん』を引用、再構成したものです。
***
-
- アイラブみー じぶんをたいせつにするえほん
- 価格:1,760円(税込)
「(絵本の主人公の)“みー”は、ズボンをはいているから男の子なの?」
子どもにこのような質問をされたら、ジェンダー(生物学的な性別ではなく、社会的・文化的につくられる性別)について一緒に考えるチャンスです。「どうして、みーが男の子(女の子)だと思ったの?」と聞いてみると良いでしょう。「優しいから女の子」「ズボンをはいてるから男の子」など、その子なりの理由があるはずです。
たとえ親や保護者の考えと異なっていたとしても、頭ごなしに否定しないでください。
子どもは自分なりに、男の子はこうだ、女の子はこうだ、というジェンダーの規範を構築して、それが正しいと思っているので、混乱してしまいます。
ジェンダーを考える上で大切なのは、「枠の外」があると伝えることです。
我が家の3歳の息子は、「かわいいのは女の子みたいだから嫌だ」と言って「かっこいい」と言われたがります。そんな時は、「“かっこいい”と“かわいい”が両方あったら、2倍でお得じゃない? 人生が楽しくなるよ!」と伝えています。
また、子どもを理詰めで説得するよりも、自然にストーリーに落とし込まれているものを与えることで、「枠の外」を受け止めやすくなります。
「男はこうあるべき」「女はこうあるべき」という従来のジェンダー観と異なる、「そうじゃない」物語を繰り返し聞くことで、「女の子だって、積極的でいいんだ」「男の子だって、かわいいものが好きでいいんだ」と理解しやすくなる。『アイラブみー じぶんをたいせつにするえほん』のような絵本を物語として繰り返し読み聞かせるのは、とてもいいと思います。
子どもがお友達など周りから従来のジェンダー観に基づく考えを受け取ってくることもあるでしょう。その時も、「あなたは、こういうのが好きなんだね」「お友達は、そう考えるんだね」と、決して否定しないことです。自分が否定されないとわかれば、相手のことも否定しなくなるでしょう。
***
親は自身の考えと異なった言動を子どもがとったとき、「間違ったこと」として頭ごなしに否定するのではなく、「あなたはそう思うんだね」と一度受け止めてあげることが大切だという。冒頭の例で言えば、「男の子なのに長い髪の毛なんて変だ」と子どもが言ったとしても、「あなたは変だと思うんだね」と一度受け止めた上で、性別を問わずいろんな髪型の人がいるという、「枠の外」についてを伝えれば良いのだ。
親が「いきなり否定するような行動」を避けることが、子どもの「他者を受け入れる心」につながるのだろう。
関連ニュース
-
「夢に向かって頑張る人を応援します」は「頑張らない人は応援しません」なのか?[新書ベストセラー]
[ニュース](情報学/経済学・経済事情/社会学)
2021/05/01 -
中瀬ゆかり 中年ファミレス店長と美人女子高生の恋愛に「こんなありえない設定、でも……」
[ニュース/テレビ・ラジオで取り上げられた本](コミック/ミステリー・サスペンス・ハードボイルド/エッセー・随筆)
2016/05/06 -
吉田鋼太郎「蜷川幸雄との仕事」 聞き手・山口宏子
[イベント/関東]
2016/01/06 -
「人間について知りたくないけれど、知っておくべきこと」『言ってはいけない』著者の最新作が話題[新書ベストセラー]
[ニュース](思想・社会/科学/家庭医学・健康)
2022/10/29 -
井上荒野×斎藤由香×井上都「父と私――井上光晴、北杜夫、井上ひさし」 『ごはんの時間 井上ひさしがいた風景』(井上都著)刊行記念トーク
[イベント/関東](エッセー・随筆)
2017/01/12